甲状腺とは

甲状腺のイメージ画像

甲状腺とは、首の喉ぼとけの直下にあり、蝶が羽根を広げたような形をしている小さな臓器です。全身の新陳代謝や細胞の成長促進にかかわるホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌しています。甲状腺ホルモンは脈拍数や体温、自律神経などの働きを調整し、生きていくためにとても重要な働きをしています。
また女性においては甲状腺ホルモンの異常が不妊や流産とも関連することが知られています。
甲状腺の病気の代表的なものとして以下が挙げられます。

  1. 甲状腺機能亢進症(甲状腺ホルモンが過剰につくられる)
    ⇒バセドウ病、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎 など
  2. 甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンが不足する)
    ⇒橋本病 など
  3. 甲状腺腫瘍(甲状腺に腫瘍ができる)
    ⇒腺腫様甲状腺腫、嚢胞、甲状腺がん、悪性リンパ腫 など

主な甲状腺疾患

バセドウ病

甲状腺ホルモンが過剰につくられる「甲状腺機能亢進症」の中で最も代表的な疾患です。バセドウ病は自己免疫疾患でもあり、血液中に甲状腺を刺激する抗体がつくられ、過剰に甲状腺ホルモンを分泌させてしまいます。安静にしていても常に運動したような状態となり、動悸や息切れ、汗をかきやすい、きちんと食べても痩せてしまうといった症状が現れます。甲状腺が腫れたり、眼球が突出するといった症状が現れることもあります。
バセドウ病は女性の患者数が多いですが男性でも発症します。はっきりした原因はわかっていませんが遺伝的な要因以外にも、ストレスや喫煙も発症に関与すると言われています。

バセドウ病の治療

まず最初に、内服薬で甲状腺ホルモンを正常化させる治療を行います。経過や合併症の有無などによって、放射線治療や手術等の治療方法を検討いたします。
薬物療法では抗甲状腺薬の内服を行います。治療開始後甲状腺ホルモンが正常化し、通常の生活が送れるようになります。ただしすぐに内服を中止してしまうと再燃してしまうため、定期的な通院による検査が必要で徐々にお薬を減らしていくことが重要になります。
また内服開始後2、3か月は副作用が起こりやすいため、2週間に1度の血液検査が必要となっています。

橋本病(慢性甲状腺炎)

橋本病は、甲状腺に対する自己抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体:抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体:抗Tg抗体)が陽性となり甲状腺に炎症が起こる病気で慢性甲状腺炎とも呼ばれています。無症状のこともありますが、病気が進行すると甲状腺ホルモンの分泌が低下してくることがあります。代謝が悪くなるため、むくんだり、寒さに敏感になったり、便秘になったり、疲れやすくなったりという様々な症状が全身に現れます。30~40代の女性に発症しやすい傾向があります。日本人女性では10人に1人程度見られる頻度の高い疾患ですが、全員が甲状腺機能低下症になるわけではなく、甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満といわれています。

橋本病の治療

血液検査で甲状腺機能に応じて内服薬で不足している甲状腺ホルモンを補う治療を行います。妊娠希望のある女性ではより厳格な管理が必要になり、基準の範囲内でも甲状腺ホルモン剤の内服をすることがあります。

甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍は、その名の通り甲状腺内に腫瘤ができている状態で、良性と悪性があります。

小さな腫瘍では自覚症状が無いことが多く、他の画像検査をした時に偶然甲状腺に腫瘍を指摘されて見つかるケースがほとんどです。
腫瘍が見つかった場合には、まず腫瘍が良性か悪性かを判断することが重要なため、超音波や血液検査を行います。細胞診検査が必要な場合は近隣の医療機関をご紹介いたします。

甲状腺腫瘍の治療

基本的に良性の場合は経過観察となることが一般的ですが、腫瘍が大きかったり、腫瘍が原因で呼吸困難や嚥下障害などが起きたりしている場合には腫瘍摘出の手術を行います。悪性腫瘍については、甲状腺を摘出するなどの手術療法、放射線治療、化学療法など、病態に合った治療を行います。治療が必要な場合は近隣の医療機関をご紹介いたします。